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生意気な中学生

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新しく発売されたル・グランの評価が高かったので、無性に食べてみたくなり、仕事の合間にマクドナルドへ立ち寄った。

店内に入ると、見るからに生意気そうな中学生らしい集団が、我が物顔で喫煙席を陣取ってタバコをふかしている。

そんなことは気にせず、オーダーをしにいくと、若く可愛い店長代理が素晴らしい応対をしてくれた。

素敵な女性の笑顔には、いつも癒される。

粗暴な振る舞いをしている中学生を避けて、喫煙席内にあるカウンター席に座った俺は、早速バーガーに齧りついた。

そばにいる女子中学生のつけている安っぽい香水の臭いがキツく、喫煙席内に充満している。

そのこともあってか、思ったより美味くない。

やはり、マクドナルドでは、フィレオフィッシュを食べるべきだと後悔する。

そんなことを考えていると、先ほどの可愛い店長代理が、中学生の集団に注意しにきた。

「これから混んできますし、何も注文されないなら、もう出ていってください。もし居続けるなら、ひとり一個は商品を買ってください」

様子から判断すると、ろくに注文もせず、長時間居座っていることがわかる。

「これから混んでくるって、なんでわかんだよ? ねえちゃん、ふざけたこと言ってると、さらっちゃうぞ……」

そう応対したのは、生意気なガキンチョにありがちな蛍光ピンクの服を着て、いがぐり頭にジェルを塗りつけているリーダー格の男だ。

素直に従えばいいのに、なんにでも逆らいたい年頃なのだろうか。

しかも、女の子に対して、さらうと発言したことは許しがたい。

「この店の人間だからわかるんです。とにかく、注文しないなら出ていってください」

毅然とした対応を取る店長代理に感銘を受けた俺は、心の中で喝采を送った。

ハタチそこそこにしかみえないのに、総勢七人の不良中学生を相手に、一歩も引かない度胸が素晴らしいのだ。

すると、二人の少年が席を立ち、売場の店員に対してスマイルをくれと叫んだ。

店員が苦笑いで応じると、領収書をくれとからかう。

くだらない迷惑行為を目の当たりにして、ムカつきながら様子をみていると、業を煮やした店長代理が最終通告を突きつけた。

「何も買わないなら、今すぐ出てください。迷惑です」

「今、スマイル買ったじゃねえか。しつけえ女だな!」

店内で息巻くリーダー格の態度に、もはや黙っていられなくなった俺は、居直る彼らに厳しく言った。

「君たち、いいかげんにしときなよ。迷惑だって言われてるんだから、もう出ないとさ……」

口出しするつもりはなかったのだが、彼等の悪態に接して気分は悪かったし、ひとこと言ってやらないと気が済まなくなってしまったのである。

すると、七人中の四人が、いそいそと退店していく。

「ありがとうございます……」

それを確認した店長代理は、わざわざ俺のところにきて、そっと礼を言いにきてくれた。

しかし、生意気なリーダー格の小僧と安い香水の臭いを振りまく女、それにリーダー格の付き人みたいな小僧の三人は、言うことを聞いてたまるかという雰囲気で居座っている。

「あのオヤジ、いいカッコしやがって……」

リーダー格の小僧は、異様にひねた口から、そんな言葉を発した。

その上、ニタニタしながら、バカにするように俺をみている。

「何見てんだ? なんか用か?」

「見てちゃ悪いのかよ? 」

(稀に見るほど、どうしようもないガキだな……)

「君は、いくつだ? 目上の人と話すときは、そんな話し方したらダメなんじゃない?」

「十五だよ! つーか、おっさん! あんた、一体なんなんだよ」

どちらかといえば気が短い方である俺は、これ以上関われば昭和的な指導をしてしまいたくなる気持ちに駆られると思い、早く出てやれよと声をかけて店を出た。

「あいつ、マジうぜえな」

リーダー格の小僧は、退店する俺の背中に向けて、聞こえるように言った。

相手にしないようにして外に出ると、マクドナルドの隣にあるビルの入口には、先に出た四人がたむろしていた。

その足元には、無数の唾が吐かれ、たくさんの吸い殻がポイ捨てされている。

いつも思うことだが、いきがっている中高生は、なぜ路上に唾を吐くのだろうか。

そんな光景を見るたびに、しっかりと掃除させたくなるのは、決して俺だけではないはずだ。

(ダメだ、こりゃ……)

あまりの傍若無人振りに堪忍袋の緒が切れた俺は、仕事上で知り合った所轄署の少年課にいる刑事の携帯を鳴らして、一連のことを話して処理を頼んだ。

その五分後……。

向かいにある現場から見ていると、三人の警察官と顔見知りの刑事が、総勢四名で現場に臨場した。

彼等の振る舞いを注意し、持ち物検査を行っているようだ。

すると、少年グループの一部が、そばの植え込みにタバコを隠した。

これを見逃さなかった知り合いの刑事が、厳しい表情で彼等を問い詰める。

結局、数台のパトカーに乗せられた彼等は、全員が警察署に連行されていった。

これで改心してくれたら良いが、彼等の態度からすれば、その可能性は少ない気がする。

少しやりすぎたかな……。

自分の対応を反省するとともに、この国と彼等の未来を案ずる俺なのであった。





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