先週の土曜日は、子供達の通う小学校で学芸会が開催されたため、今日は振替休日であった。
お姉ちゃんの方は、友達と出かけるイベントがあるらしいので心配ないが、息子ちゃんは予定もなく暇だという。
俺の方もやりたいことはたくさんあるのだが、息子ちゃんをひとり放置しておくのは危険であるし、少しかわいそうでもあるので、ここぞとばかり東京江戸博物館にいく計画を立てた。
「えー? 博物館は嫌だな……」
まるで興味を示さない息子ちゃんを説得するために、博物館のホームページを開いて説得してみる。
すると、長屋の構造などに段々と興味を持ってきた息子ちゃんは、徐々に行く気になってくれた。
「じゃあ、ここでいいや」
ようやく了承してくれたので、早くから行こうと営業時間を調べてみると、月曜日は休館日であることを知った。
「あ、月曜日は休みだって……」
「えー! やっと行きたくなってきたのに、なんで休みなの? ていうかさ、パパが博物館行くって言うときは、いっつも休みだよね……」
以前、休館日を調べずに国立博物館まで行き、神様を観に行ったはずが恐竜を観せられて帰ってきたことのある息子ちゃんは、忌まわしい父の前科を忘れてはいない。
「月曜日は、休みのところが多いんだよね。でも、行く前に気付いたから、まだ良かったじゃん……」
平静を装いながら、行く前に気付いて良かった風の雰囲気を醸し出した俺は、自分の完璧さをごまかした。
しかし、どこに行こう?
二人とも、乗り物は苦手だから遊園地は無理だし、パンダのいる動物園も月曜日が休みだ。
なにも思いつかないので、予定を決められないまま床に入り、月曜日の朝を迎えた。
「ねえ、パパ。今日は、どこにいくの?」
「うーん、どうしようか?」
アイデアのない父を見透かしたように、ひどく冷たい視線で俺を見下ろす息子ちゃんは、どこに行くんだと何度も喚いた。
「よし! じゃあ、プールに行こうか」
「うん。江戸時代より、プールのほうがいい!!」
行き先がプールに決まり、逆に喜んでいる息子ちゃんを車に乗せ、隣町にあるプールを目指して走った。
「今日は、どっちが長く潜れるか、パパと勝負だ!」
ひとり盛り上がっている息子ちゃんは、車中で鼻をつまみ、息を止める練習までしている。
行き先が決まらず、昨夜までは悪かった機嫌も、なんとか治ってくれたようだ。
近隣にあるモールの駐車場に車を停め、駐車券欲しさに、そこでランチを済ませる。
そうして、俺達親子は、いよいよプールに向かった。
はやる気持ちから、入口まで走った息子ちゃんが、中に入ろうと自動ドアの前に立つ。
しかし、自動であるはずのドアは、一向に開かない。
ドアを前に、呆然と立ち尽くしている息子ちゃんは、振り返ると訝しげな表情で言った。
「ねえ。ドア開かないよ……」
(ま……、まさか⁉)
あわてて周囲を見回すと、自動ドアの横には、忌わしい三文字が赤字で書かれていた。
休館日。
息子ちゃんよ!
君のパパは、今日も完璧だ。
万引きGメンは見た!/伊東 ゆう
¥1,575
Amazon.co.jp
↧
完璧パパ
↧