「すみません、いま起きました。あと五分待ってください」
全日本空手道選手権の当日、午前八時に集合と約束をしていたにも関わらず、約束の時間に起床したMから連絡がきた。
「大丈夫だよ。俺も、いまさっき起きたばかりだから…」
そういう俺も、ほんの数分前に起床したばかりで、少し慌てて用意していたところだ。
いつでも完璧な俺達は、朝が苦手なので、いつもこうなるのである。
だが今日は、試合に出場するO選手を、迎えにいかなければならない。
少し早めに出た俺は、あらかじめ車を出しておこうと考え、ひとり駐車場に向かった。
車に乗り込んで、早速にキーを廻す。
(あれ……)
ところが、何度やってもセルは空回りするばかりで、エンジンはかからない。
また室内灯を切り忘れたのかと、車内を見渡してみても異常はなかった。
大事な日に限って、どうしてこんなことが起こるのか。
もう完全に遅刻してしまうことになるが、結構な量の荷物もあるし、ここはJAFを呼ぶしかない。
早速電話をかけて手配すると、到着までに三十分かかるという。
各方面に、お詫びの電話を入れて、遅刻することを伝える。
そして、原因を探るべく車内で右往左往していると、目をパンパンに腫らせた寝起き顔のMがやってきた。
状況を聞いた途端に、したり顔となったMが、モハンの真似をして俺をイラつかせる。
「二人揃うと、いつも完璧なことが起こりますね。イッタイナゼデショウカ……」
それは、俺も知りたい。
(もう、このしと(人)と一緒に行動するのは控えよう……)
もはや鉄の塊と化した車の前で、そう決意する完璧な俺なのであった。
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