昨夜、夜の十時まで捕捉活動に当たっていた俺は、しっかりと一件片付けてから、次の約束の待ち合わせ場所へと向かった。
約束の時間は、十一時。
現場から待ち合わせ場所までは、十五分ほどあれば到着する見込みなので、途中に食事をすませる魂胆だ。
腹を空かせながらバイクを走らせて、わざわざ遠回りをしてまで、道中にあるお気に入りの店を目指す。
(もしや……)
少し手前で、その店の看板が消されているのを見つけた俺の脳裏に、言い知れぬ完璧感が漂う。
“本日の営業は終了しました"
その脇に掲示された営業時間をみると、この店の閉店時間は十時半で、ラストオーダーは十時十五分とされていた。
ふと、時計をみる。
十時十七分であった。
(あと二分、早ければなあ……)
こうした看板を見ると、俺に食わせるメシはないと、そんな風に言われているように思えてくる。
気を取り直した俺は、そのままUターンをかまして、次に浮かんだ店を目指して走った。
待ち合わせ場所近くにあるその店は、年中無休である上に、夜中の二時までやっているので安心だ。
店に入り、食事を済ませる。
その時間は、十時五十分であった。
待ち合わせ場所までは、二分もあれば到着できるが、遅れてはならぬと少し急いで店を出た。
(あれ、ない……)
到着したことを知らせるために、電話を探すと、スマホを店に忘れてきたことに気がついた。
いま来た道を慌てて引き返して、忘れたスマホを受け取り、焦りつつも待ち合わせ場所に戻る。
なんとか約束の時間に間に合い、到着の連絡を済ませた俺は、一服したくなってタバコを取り出した。
だが、残念なことに、中身はからっぽであった。
でも、幸いなことなのか、目の前には自販機がある。
ここに自分好みの銘柄は売っていないが、どうしても吸いたい。
その衝動を抑えきれずに、仕方なく適当なタバコを買うことにする。
金を入れて、タスポをタッチして、好みではない銘柄のボタンを押す。
(はあ……?)
なぜか、商品がでてこない。
お釣りだけ出てきて、肝心のタバコが出てこないのだ。
しかも、販売機に管理者の標識はなく、どこに苦情をいえばいいのかわからない有様だ。
ひどい仕打ちに愕然とした俺は、回収をあきらめて別の銘柄を購入して、そっとタバコに火をつけた。
そうすることで、イラつく気持ちを抑制して、自販機を破壊したくなる自分を戒める。
(さてと、ひと仕事しますかね……)
商談相手との打ち合わせを済ませて、ようやく家に帰った俺は、部屋にあるパソコンの電源を入れた。
なぜか、一向に起動しない。
(あれ、なんでだろ?)
その原因は、まるで不明だ。
(ああ、神よ! なんて、一日なのでしょう……)
完璧な出来事の乱れ打ちに辟易とした俺は、意気消沈したままパソコンの修復に勤しみ、なんとか修復に成功した。
その時刻は、午前五時。
今日の俺も、完璧だ。
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乱れ打ち
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