激しい雨に打たれながら走り、大盛軒に辿り着くと同時に、なぜか雨は止んだ。
ずぶ濡れになった服を拭きながら、一番激しく降っている時に、わざわざ走ってきた自分達の間の悪さに呆れる。
今日は、ホントに完璧だ。
取り急ぎ店の中に入り、お決まりである鉄板麺を頼む。
鉄板麺を初めて食べるというモハンは、この笑顔で食らいついた。
俺と同じバイクに乗る二代目店主とバイク談義をしながら、あっという間に食べ終えて外に出ると、バイクに乗れないほどの強風に身体を煽られた。
天候の様子を見るべく、向かいにある凮月堂でコーヒーを飲むことにする。
すると、大盛軒の店員さんが血相を変えて、凮月堂に飛び込んできた。
「お客さんのバイク、倒れちゃってますよ!」
「まさか!?」
慌てて外に出てみると、俺のバイクではなく、モハンのバイクが倒れていた。
思わず本音を漏らした俺に、恨めしげな顔をしたモハンが呟いた。
「イトウサントイルト、イツモカンペキニナリマス。イッタイナゼデショウカ……」
はっきし(り)言って、こっちのセリフであるが、意気消沈するモハンに追い打ちをかけるわけにもいかない。
「モハン、コーヒーご馳走してあげるから、元気だせよ……」
落ち込むモハンを慰めつつ、雨が止むまでコーヒータイムを過ごして外に出ると、さらなる悲劇がモハンを襲った。
「イトウサン、モハンノヘルメットガナイケド、ドコイッタカナ……」
そんなの知るかと思いながら周辺を探してみると、15メートルほど離れた路上に、モハンのヘルメットが転がっているのが見えた。
「ナンデコウナルカナア。モハン、コンナニカンペキナヒハ、ウマレテハジメテデス」
モハンよ!
完璧な一日をありがとう。
今日のことは、一生忘れないぜ!