「せっかく来たから、骨付き鳥も食べたいな」
今回の香川出張に、同行してくれたふたりの仲間から、そうねだられた。
前の晩には、悶えるほど美味い瀬戸内の魚を堪能したので、俺も肉を食べたい。
「じゃあ、行こうか」
チェックアウトを済ませた俺達は、骨付き鳥を求めて、慣れぬ高松市内の飲食店街を練り歩いた。
うどん屋、とんかつ屋、ラーメン屋、洋食屋を通過し、骨付き鳥を出している店を探す。
しかし、骨付き鳥の看板を出している店はたくさんあるのに、どこも営業していない。
「名物だし、一軒くらいはあるだろう」
そう決めつけて、商店街の端から端までを、三人で探し歩く。
しかし、骨付き鳥を出す店は、一軒も見つからなかった。
「駅ビルの中だったら、骨付き鳥を出す店があるかもよ」
目の前に大きな駅ビルを見つけた俺達は、エスカレーターに乗って、十一階にあるレストラン街に立ち寄った。
しかし、そこにあるレストランは、イタリアンや中華ばかりで、またしても骨付き鳥を出す店はない。
「ちょっと来すぎたみたいだし、折角だから、電車に乗って戻ろう」
出張が決まった当初から、機会があれば電車に乗ろうと画策していたこともあって、繁華街の中心にある駅まで戻ることにした。
気がつけば、ホテルを出てから、すでに四十分近く経過している。
路線図を見ると、二駅分の距離を歩いているようだ。
二両しかないノスタルジックな電車に乗り、二つ先の駅で降りる頃には、みんな不機嫌になっていた。
腹が減りすぎて、話すのもイヤだと言う感じである。
改札を出たところで駅員を捕まえた仲間の一人が、何事か質問すると、うんざりした顔で戻ってきた。
「ねえ、ゆうさん。骨付き鳥は酒のつまみだから、昼から出している店はないってさ……」
俺ってしと(人)は、四国に行っても、完璧なのである。