納車されたばかりのトリッカーに乗って、現場に向かうべく走り慣れない道を走行していると、赤灯を回す白バイがバックミラーに映った。
道を譲るべく車線変更して、白バイの通過を待つ。
「前のバイクの運転手さん、左に寄って停まってください」
「え? 俺のこと?」
横についた白バイ隊員に、そう問いかけると、有無を言わせぬ雰囲気で大きく頷かれた。
この白バイ隊員は、俺に何を言いたいのだろうか。
信号無視や一時停止無視もしていなければ、納車されたばかりなので整備不良があるわけもなく、もちろんスピードも出してない。
なんの用かと疑問に思いつつ、指示された場所にバイクを停車すると、人懐こい笑顔を浮かべた白バイ隊員が近づいてきた。
「なんで止められたか、わかりますか?」
「まったくわからないです。なんですか?」
「このレーン、いまの時間はバス専用なんですよ。標識あるの、気付きませんでしたか?」
このレーンが、バス専用レーンなのは知っている。
しかし、その時間は17時から19時までとされているから、もう通行可能なはずだ。
「え、もう19時過ぎてますよね?」
まさかと思い時計を見れば、現在時刻は18時48分であった。
時間の感覚を間違えていたとはいえ、完璧に違反である。
「一分くらいなら大目に見るところですけど、まだ十二分前なんでね……。申し訳ないけど免許証お願いします」
減点一点、反則金六千円……。
充分に反省して、これからはミスすることなく、交通ルールを守って走りたいと思います。
今日の俺も、完璧だ。