ちょっと前に、とある警備会社からの依頼で、新人さんに対する新任教育を担当した。
今回採用された女性は、業界経験のない方ばかりで、俺の話す内容すべてに興味を示してくれた。
しかし、いざ現場に行って実践してみると、かなり動きは不自然で、その店一番の不審者と化してしまうのであった。
さらに、万引きした中学生三人組を捕捉する場面に遭遇すると、体を震わせて恐がり、処理を終えてからは仕事にならなかった。
中学生相手に、ここまで恐がっていたら、老人しか捕捉できない保安になってしまう。
こうした恐怖感を克服するには、捕捉経験を積むしかないが、その前に諦めてしまう人も多い。
はまれば楽しい仕事だから、その魅力を知ってもらえるよう、より実戦的な教育を心がけたいと感じた。
さらに、誤認に対する過度な恐怖心から、自分の目を信じられなくなると言う人もいた。
気持ちはわからないでもないが、見る仕事なのだから、自分の目を信じられなければ務まらない。
自分の目を信じるには、犯行の一部始終を、確実に見るしかないのだ。
明後日からは、万引き研究の第一人者といえる教授に実際の現場をみせて、様々な角度から万引き抑止について検証する。
もう、捕まえるだけで満足することはなく、根本的な部分を改善することで万引きを減らしたいのである。
恐がりな女性保安員が、身の危険を感じることなく活躍できる環境を作って、万引きを抑止する。
それも、目標のひとつなのである。
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