夏らしく、恐い話をしようと思う。
昨夏、ツーリング相棒のK君と、西伊豆まで走りに行ったときの話だ。
極端に交通量の少ない山道を走っていると、ヘルメットの中ではガンガンに音楽が鳴っているのに、突然に祭囃子と子供の嬌声が聞こえてきた。
その瞬間には夏祭りをやっているのかと思って通り過ぎたが、人も歩いていないような山の中で行われている祭りが、どんなものなのか気になる。
咄嗟に思い直してUターンをかました俺は、嫌がるK君を尻目に、音が聞こえたあたりまで引き返した。
すると、その場所の道沿いには、お地蔵さんが設置されており、後方には参道らしき獣道が延びている。
バイクから降りて、参道を少し歩いてみると、神社にもお寺にもみえる廃墟のような建物が現れた。
いくらなんでも、このような廃墟で祭りを開催するとは思えない。
そういえば、子供の声や祭囃子も聞こえないではないか。
それに気付いた途端、首から右肩にかけてのあたりに、ひどく重い痛みが走った。
言い知れぬ恐怖に嫌気がさして、いま来た道を慌てて引き返すと、すぐに痛みは治まった。
もしかしたら、みえない人達が祭りを楽しんでいたところを、邪魔してしまったのだろうか。
ここを走る機会があれば、もう一度立ち寄って、どんな場所か確かめたいと思う。
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恐い話
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