「社長、実は僕、先週入籍したんですよ。こんど披露宴を挙げるので、その時は絶対にきてくださいね」
お店のお客さんでありながら、いつの日にか意気投合してお友達になったK君は、いつも俺のことを応援してくれている年下の男だ。
俺のことを社長と呼ぶのは、そういう成り初めがあるからで、ウチのスタッフとかではない。
そんな彼からの結婚報告を受け、簡単な祝辞を述べ俺は、年下だという奥さんを羨みつつも、式の出席を快諾した。
「今日は、もうひとつ話したいことがあって……」
「なに、どうしたの? まさか、おめでたとか?」
「いや、そうじゃなくて。社長、聞いてください….…」
授かり説をやんわりと否定したK君は、俺に話したかったことを、淡々と語り始めた。
「実は、自分の友達に、社長のことが大好きなやつがいるんですよ。もちろん、本も読んでいるし、ブログとかもみてるみたいなんですね。で、その彼が、この前のホンマでっか⁉ TVを観て、社長みたいになりたいって思い立ったらしく、保安員の仕事を始めたんですよ」
「ウソ⁉ そんな話を聞いたのは初めてだよ。大丈夫なの、その人?」
「まあ、彼も立派な大人ですから大丈夫でしょうけど、それよりも社長の影響力って凄いですね。ほんと、尊敬しちゃいます」
あまりの持ち上げっぷりに、その真偽を何度も確かめたが、どうやら実話らしい。
こんな完璧な俺を目指して、保安に転職してしまう人がいるなんて、いままで思いもしなかった。
これこそが、嘘みたいなほんとの話である。
「結婚式には、彼も招待してますので、その時には紹介させてください」
いったい、どんな男なのだろう?
彼に会える日が、いまから楽しみだ。
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友達の友達
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