「アニキ~、なんでシカトするんですかあ……。ホント、し(ひ)どいなあ」
完璧な人からの電話を受けると、開口一番に苦情を言われたが、なんのことだか覚えがない。
「シカトって、なんだ? そんなことした覚えはないぞ……」
「アニキ¥£₩€ですよ」
この男は、何を言ってるんだろう?
ただでさえ滑舌が悪い上に、現在は前歯も抜けているので、何を言っているのか全く聴き取れない。
「は? なんだって?」
「アニキ¥£₩€ですよ」
「え? もう一回」
「アニキラインですよ。アニキLINE! 昨日LINEでメッセージ送ったのに、思い切りシカトして、ホントしどいしと(ひどいひと)ですね、おたくってし(ひ)とは……」
「あー、LINEね。ラインっていうから、全然わからなかったよ」
LINEの発音はともかく、話を要約すると、LINEを利用して俺にメッセージを送ったらしい。
しかし、どうも子供っぽいLINEを、あまり好きになれない俺は、ほとんどチェックしていない。
完璧な人は、それをシカトだと責めているのである。
通話しながらLINEのアプリを起動して、完璧な人からのメッセージを確認してみる。
(アニキー! 今日、車使います?)
やっぱり、これだ。
「ドゥフフ……。雨も上がったんで、今日はバイクで行ってきたんですけど、またお願いしますよ。ドゥフッ!」
何度断っても、俺の車をいつでも使えると思っているらしい完璧な人は、いつになったら俺を解放してくれるのだろうか。
その悩みは、今日も尽きない。
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