ちょっと前の話であるが、お菓子などを潰して歩き回る損壊犯を捕捉した。
犯人は、十代後半の、とても痩せた
女の子である。
「今日は、どうしたの？」
「友達ができなくて学校をやめたら、何も食べられなくなっちゃって、さっきまで入院していたんです」
事務所に同行してから話を聞くと、どうにもトンチンカンな答えが帰ってきた。
勝手に出してきた病院のレシートをみると、さっきまで入院していたことは本当らしい。
見知らぬ人から、いきなり人生相談されるのは、この仕事の面白いところのひとつだ。
しかし、その話は重たいモノが多く、聞いていて辛くなることもある。
どうやら今回は、そのパターンらしい。
「それは大変だったね。でも、病気だからといって、商品を壊されたら困るんだよね」
「はい、わかってます。でも、食べたくても食べられないから、見ていたら壊したくなっちゃって……」
同情できるところはあるものの、そんな気持ちを説明されても全く理解できない。
「よかったら友達になってください」
最後まで噛み合わない会話に苦笑させられた俺は、彼女を警察に引き渡すことで、この場を収めた。
世の中には、いろんな人がいるものだ。
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