川越の成田山で御祈願を終えた俺は、腹を空かせていたので、すぐそばにある博多ラーメンの専門店である笑堂に出向いた。
この店に入った経験はないが、昭和感漂う店構えに、美味そうなモノを出す予感がしたのだ。
その時間は二時半であったが、店の前には五人ほどの行列が出来ている。
朝昼と食事を取り損ねていた俺は、かなりの空腹状態にあったが、温かいラーメンにありつく瞬間を思い浮かべて、肌が痛むほどの寒さを堪えて並んだ。
三十分ほど待ち、ようやく自分の番が訪れた。
狭い店内に入り、看板メニューである豚そばを注文する。
待つこと五分。
やっと出てきたラーメンを口にすると、残念なことに俺の口には合わなかった。
あわよくば替玉を頼もうと思っていたのだが、それも無理な状況である。
寒さと空腹を堪えて、並んでまでして入った店で食べたモノが口に合わないとは…。
完璧に失望した俺は、その後の予定を取りやめて、傷心のまま家路を急いだ。
もう博多ラーメンには騙されない。
そう心に誓う俺なのであった。