「ちょっと、あんた。自転車のカゴに財布入れっぱなしだったわよ!」
朝早く、布団の中で微睡んでいると、嫁にいきなり怒鳴られた。
その手には、見覚えのありすぎる俺の財布が握られている。
「ウソ!?」
そういえば……
前夜は嫁の自転車に乗って買物に行き、買物袋と財布をカゴに入れて帰宅した。
そして、駐輪場に到着するや電話が鳴り、それに応対している内に財布の存在を忘れてしまったのだ。
財布の中には、数万円の現金とキャッシュカードをはじめ、数枚のクレジットカードも入っている。
もし失くなっていれば、早速に手配しなければならない状況だ。
「もしかして、空っぽになってる?」
はやる鼓動に耐えながら、恐る恐る嫁に尋ねる。
「見たところ、中身は大丈夫みたいよ。一晩中外に置いといて、よく無事だったわよね。しかし、何やってんのよ、ホントにもう……」
中身が無事であったことに安堵するも、俺を蔑む嫁の視線が痛い。
ひとつの言い訳も思いつかずに、それから逃がれるべく布団に潜った俺は、完璧な自分を呪いながら嫁が立ち去るのを待った。
「これからは気をつけなさいよ!」
「はい、すみません。以後気をつけます……」
(ひっ……)
怒声と共に、力強く閉められる扉の音が、布団に潜る俺の身を萎縮させる。
(もう、嫁の自転車を借りるのはやめよう……)
そう心に決める完璧な俺なのであった。
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財布
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