誕生日であることを気遣ってくれているのか、二番目の娘ちゃんがバイクに乗りたいと言うので、二人でランチに行く約束をした。
いまや、二人で出かける機会は、ほとんどない。
その前日から、どこに行こうかと頭を悩ませ、密かな楽しみにしていた。
その当日。
部活に勤しむ彼女と約束した時間まで、まだ一時間ちょっとあるので、その前に買い物を済ませようと出かけることにした。
行き先は、バイクで十五分ほどの場所にあるバイク用品の専門店。
バイクの駐車場を変えたので、なるべく早めに太めのチェーンキーを用意したかったのである。
多少物色したとしても、充分に間に合う計算で出かけたのだが……、
みごとにやっていない。
どうやら消費税対策に追われ、臨時休業しているらしい。
約束の時間まで、あと四十分しかない。
しかし、納車されたばかりのバイクが心配だから、なんとしても今日中にチェーンキーを手に入れたい。
意を決して、およそ二十分かけて、練馬にあるナップスを目指して走る。
目当ての商品を買い、少し急いで家路を辿る。
その結果、約束の時間に十分ほど遅れた。
だが、このくらいなら許容範囲だろう。
自宅の前から、娘ちゃんの携帯電話を鳴らしてみる。
ところが、帰ってきてるはずの娘ちゃんが電話に出ない。
仕方なく自宅の電話にかけ直すと、電話口に出た嫁が言った。
「寝ちゃって起きないから一人で行ってきな……」
気落ちしながら、いつも行く定食屋に行き、誕生日のランチをひとり寂しくいただく。
四十三歳になった俺は、今年度も完璧だ。