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完璧の遺伝子

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掃除機をかけ終わり、コンセントを抜こうと頭を下げた瞬間、額に激痛が走った。

デスクの角に、額をぶつけたのである。

額を押さえて、その場にうずくまること、およそ三十秒。

恐る恐る手を離してみると、掌に大量の血が付着していた。

洗面所に駆け込み血を洗い流し、傷口を確認してみる。

すると、思いのほか深く、広い傷口が露わになった。

止まらぬ血をタオルで押さえながら、絆創膏を取り出した俺は、リビングにいる奥さんのところに駆け寄った。

「あんた、どうしたの?」

「デスクの角にぶつけたら切れちゃった。とりあえず絆創膏を貼ってくれ……」

「ギャハハハハ。馬鹿だねえ……」

爆笑しながら治療されるという屈辱に耐えながら傷口を消毒してもらい、持ってきた絆創膏を貼ってもらう。

「明日撮影だから絆創膏貼ってられないんだけど……。傷口、目立っちゃうかな?」

「結構深いから、微妙だなあ。でも、顔にたくさん傷あるし、ちょっと人相悪くなるくらいで、あまり目立たないと思うよ」

容赦ない嫁の一言に絶句していると、横にいた息子ちゃんが呟いた。

「パパ、今日も完璧だね……」

そういえば、昨日も完璧だった。

ロケ先で財布がないことに気付き、そこら中を探し回ってから家に電話して息子ちゃんに探してもらうと、部屋に置いたまま出かけていたことが判明したのである。

「そういえば、今日は僕も完璧だったんだ。横断歩道を渡る度に赤になったし、踏切を渡ろうとしたら行きも帰りも閉まっちゃったんだよ。パパが完璧だから、似ちゃってるんだぞ。いい加減、完璧はやめてくれよ……」

息子ちゃんには申し訳ないが、それを治す術は俺も知らないので、ここは居直るしかない。

完璧の遺伝子ここにあり。

俺達親子は、いつでも完璧なのである。






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