先週末、十九歳になるウチのスタッフで、道場生でもある女の子が関東大会に出場した。
入門から六ヶ月。
これがデビュー戦である。
朝早く起きて、車で会場に向かっていると、試合を控える本人から電話があった。
「あの、ウチ……。家に帯を忘れてきちゃったんですけど、大丈夫ですかね?」
なぜ帯だけを忘れるのだろうか。
まったく理解できないでいると、隣に座るO先生が言った。
「武道家が帯を忘れるなんて、切腹ものですよ。だらしないなあ」
その言葉を、そのまま彼女に伝えてみる。
「切腹って、なんですか? 切羽詰まるってこと?」
もう、なにを言わんやなのである。
結局、午後に行われる少年大会に出場する予定の、知らない小学生に頼み込んで緑帯を調達した。
人の緑帯を締めて強がる白帯の彼女に、呆れたのは言うまでもない。
開会式を終えると、トーナメント形式の試合が始まる。
本大会は、体育館の中にAコートからCコートまでの試合場を作って、クラス別に進行される形式だ。
例年通り、主審を務めることになっている俺の担当はAコートなので、Cコートで闘う彼女の様子は見ることができない。
決勝戦を残し、三十試合ほどの試合を裁いて、試合を終えたはずの彼女のもとに駆けつける。
すると、なんと決勝進出を決めていた彼女が、応援に来てくれた二人の友人とはしゃいでいた。
決勝戦では副審を担当する予定なので、ずっと指導してきた彼女の奮闘ぶりを、ようやく見ることができる。
そうして迎えた決勝戦。
圧力では負けていなかったものの、上段前蹴りを顔面に喰らい、技有りを取られて判定負け。
いい試合をしていただけに、相手側の旗を上げるときには、とても悔しい気持ちになりました。
その夜は、恭士郎選手と共に、彼女の健闘を讃えました。
なかよく太鼓の達人をやっている二人の姿が可愛くて、ひとり爆笑してしまいましたよ。
次回は優勝できると思うので、これからもサボらずに稽古をして、どんどん強くなってほしいと思います。
今回は、お疲れさま~。