言霊

打ち合わせの帰り道、中学からの親友で、ツーリング仲間でもあるＹちゃんの家に立ち寄った。

特に用事はないが、近くを走る時には素通りできずに、いつも顔を出しているのである。

一緒にお茶を飲んで時を過ごし、帰ろうとバイクに跨ると、俺を見送るＹちゃんが言った。

「こんなんで大丈夫なの？」

別れ際、俺のバイクのハンドルバーに取り付けられたiPhoneホルダーを見たＹちゃんが、突然に言う。

「今のところ、なんの問題もないけど、どうして？」

「いや、なんとなく気になって……」

いつも一緒に走っているのに、なぜ今日に限って、そんなことを聞くのだろうか？

少し不思議に思いながら、ホルダーにiPhoneをはめ込んで実演してみせる。

「こう見えて、なかなかの優れモノなんですよ」

「なるほどね！じゃ、気をつけて」

そんな会話を最後に、Ｙちゃんと別れた俺は、iPhoneからBluetoothで音を飛ばして家路についた。

「ピポパポ……」

帰りの道中、突然に音が途切れた。

バッテリー切れかと思い、ホルダーに取り付けたiPhoneを確認すると、跡形もない。

どうやら、ホルダーから外れて、吹っ飛んでしまったようだ。

慌ててバイクを停めて、走ってきた国道を駆け戻り、音の途絶えた辺りを中心に捜索する。

あった。

しかし、交通量が多く、取りに行けるタイミングがない。

目の前で車に轢かれるiPhoneを、為す術もなく見守り、ようやく拾い上げると……。

表